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日本では、1,034万6千頭の犬と995万9千頭の猫が人と共に暮らしています(一般社団法人ペットフード協会、2014年調査)。犬・猫の頭数を合わせると、15歳未満の子どもの数を超えました。核家族化、少子高齢化が進み、ひとり暮らし、ふたり暮らしが多数を占める現代。ペットを家族の一員として暮らす家庭が増え、老後のパートナーとしてのペットの重要性が増しています。人と犬・猫との絆はこれからますます深まっていくでしょう。

ペットがいるのといないのでは大きな違いがあります。家に帰ったとき、犬なら喜びに満ちた表情でしっぽをちぎれんばかりにふり、猫なら甘えてのどを鳴らしつつ身体をすり寄せて来るでしょう。抱きしめれば、人より3度ほど高い体温がここちよく感じられます。ペットは、生活に大きな喜びをもたらしてくれるとともに、心と身体の健康の上からも、人と人とをつなぐコミュニケーションにおいても、大切な存在となっているのです。

ペットといると、「癒される」と感じることがありますが、実際に、犬や猫は人に良い効用をもたらす不思議な力を持っているようです。この事実が初めて証明されたのは、1970年代のことでした。米国の大学で行われた心臓病についての調査で、ペットのいる患者の死亡率がペットのいない患者の死亡率の3分の1であることがわかったのです。その後も世界各国で研究が進められ、犬・猫が人にさまざまな効用をもたらすことがわかってきました。いわゆるアニマルセラピーです。

しかし、ペットと暮らすというのは、ひとつの命を引き受けること。たやすいことではありません。犬・猫の寿命はおよそ15年。ひとたび家庭に迎えたら、終生、愛情と責任を持って、適正に飼育しなければいけません。途中で飼育をやめることはできないのです。

ペットとのつきあい方は、都市部を中心に変わって来ています。日本では、犬を戸外につなぎ、猫を外出させるという飼い方がかつては一般的でしたが、最近では、小型犬ばかりでなく、中型犬も大型犬も、家の中で暮らすようになりました。猫については、外出させれば、車にはねられたり、感染症がうつる恐れがあり、近隣で苦情やトラブルが発生する可能性もあることから、外出させる人が激減。完全室内飼育が一般的となっています。

ペットは、シニアライフを潤いに満ちたものにしてくれますが、飼い主が年を取るにつれ、ペットのケアや医療が十分にできなくなる、飼い主の病気や死亡によってペットが残されてしまう、などの問題も起きています。実際、東京都動物愛護相談センターに引き取られる成犬・成猫でいちばん多いのが、飼い主の病気や死亡などで残されたペットです。ついこの間まで人といっしょに幸せに暮らしていた犬・猫がある日突然、自治体の施設に引き取られ、殺処分される…。そうした事態を避けるためには、万が一の場合でも、ペットが生きて行かれるようにしておくことが必要です。

ひるがえって、火山列島に暮らす私たちは、地震や噴火などの災害に見舞われる危険とつねに隣り合わせています。「大災害は、いつどこで起きてもおかしくない」専門家が口をそろえていう言葉です。ある日突然、大災害に見舞われたら、ペットと暮らす人はどうしたらよいのか。過去の大災害の教訓から、平常時に防災・減災対策をしっかり行い、いざというときには適切な行動をとって、犬・猫といっしょにサバイバルしたいものです。

地域に目を向ければ、飼い主のいない猫の問題があります。猫は、生物学上、ネコ科ネコ属のイエネコ(ドメスティックキャット)。人が終生、責任を持って飼育すべき家庭動物、いわゆるペット動物です。「野良猫」と呼ばれているのは、正確にいえば、飼い主のいない状態にあるイエネコ。「猫が歩いている街はいい」などという人がいますが、猫にとって、戸外の環境は過酷です。厳寒、豪雨、降雪、台風、猛暑と天候の激変にさらされ、うまく食べ物を見つけられず栄養失調におちいったり、車にはねられたり、感染症にかかったり…。

近年、猫も長寿化が進み、飼い猫では20歳過ぎまで生きるものもいますが、飼い主のいない猫の平均寿命は短く、2、3年から4、5年といわれています。飼い主のいない猫の問題をどうしたらよいのか。行政とボランティアが連携・協力して、飼い主のいない猫を一時保護して、去勢・不妊手術を行い、元の場所に戻して、一代限りの命を見守っていく、いわゆる「地域猫」が都市部を中心に普及しています。ボランティア団体が中心となって、子猫などを保護して譲渡する活動も広がっています。前出のペットフード協会の調査によれば、猫をブリーダーやペットショップから購入する人は2割未満とむしろ少数派で、保護したり、動物愛護団体から譲渡されたり、シェルターから引き取るなどでいっしょに暮らすようになる人が多数を占めているのが現状。飼い主のいない猫を家族として迎えて共に暮らす家庭はよりいっそう増えているようです。

ペットと出会ったその日から、いつかはおとずれるペットとの別れを覚悟しなければなりません。「うちの子が死ぬことなんか考えたくない」と思うかもしれませんが、犬・猫の寿命は、人の寿命の4分の1から5分の1。順番からいえば、ペットのほうが先に逝きます。いくら覚悟していても、ペットを失った悲しみ、ペットロスは、とてもつらいもの。「親が死んだときより悲しい」とは、ペットを失った人がよく口にする言葉ですが、犬・猫の死がもたらす悲しみがいかに大きいものかがうかがえるでしょう。ペットロスとどう向き合うか、犬・猫と暮らす人が考えておきたいことです。

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